建設業における出向は人材派遣になる?派遣と出向の違いを解説!
さまざまな業界で人手不足という声をよく聞きますが、建設業も例外ではなく、深刻な問題となっています。人材を確保する手段として出向や派遣がありますが、2つの違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
今回は出向と派遣の違い、建設業における雇用関係の重要性について解説します。
派遣と出向の違い
出向と派遣も、出向あるいは派遣された先で業務を行うという働き方のため、似ているように思えますよね。それぞれの仕組みを理解し、異なる点を考えていきましょう。
出向とは
出向とは、元々在籍している会社に籍を置いたまま、子会社や関連会社で業務を行う働き方です。派遣と異なる点は、出向先とも労働契約を結ぶということです。派遣とは違い、法律で定められたような定義はありません。
一般的に出向には、出向元との労働契約は結んだまま出向先との労働契約をプラスする在籍出向と、出向元との労働契約を解消して出向先のみと契約を結ぶ転籍出向の2種類があります。
在籍出向はあらかじめ期間が決まっていることが多く、業務終了後に出向元へ戻るため異動のような意味合いもありますが、転籍出向は出向元との契約は解消しているため、基本的に戻ることはなく、出向先の企業への転職というイメージです。
出向の目的は会社や業務内容によってさまざまですが、雇用の確保や技術指導、スキルの取得や関連会社内での交流などが多いようです。
派遣とは
派遣とは、派遣元の会社と雇用契約を結び、派遣先の会社で業務を行う働き方です。この点だけを見ると在籍出向と同じように思えますが、派遣社員は派遣先の会社からの指揮命令を受けるものの両社間に雇用関係はありません。これは派遣と出向の大きく異なるポイントでしょう。
派遣には労働者派遣法という法律があり、さまざまなことが定められています。実際に給与を支払うのは派遣元の会社であり、保険料なども派遣元の負担となります。同じ派遣先の同じ組織内での雇用期間は、最短で31日以上、最長3年以内と定められていますが、出向に関しては法律で定められている雇用期間はありません。
派遣先の会社としては、ニーズに合った即戦力となる人材を確保できるため、多くの会社で派遣社員を受け入れています。
建設業における直接的な雇用関係とは
建設業でも人手不足に悩まされている会社は数多く存在します。現場に置かなければならない主任技術者・監理技術者の確保も課題となっていますが、そこには雇用関係が関わるのです。
主任技術者・監理技術者となるためには、所属する建設業者との間に直接的かつ恒常的な雇用関係が必要との規定があるからです。建設業における“直接的な雇用関係”とは、主任技術者や監理技術者とその所属する建設業者との間に第三者が介入する余地のない、雇用に関する一定の権利義務関係(賃金・労働時間・雇用・権利構成)が存在することをいいます。
出向者や派遣社員は、このような直接的な雇用関係にあるとはいえず、たとえ資格や経験があっても主任技術者や監理技術者にはなれないということになります。
建設業における恒常的な雇用関係とは
建設業における“恒常的な雇用関係”とは、一定の期間にわたって当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることをいいます。
国などが発注する公共工事においては、基本的には主任技術者や監理技術者は、所属建設業者から入札の申込のあった日より3か月以上前から雇用関係にあることが必要であるとされています。
建設業において直接的かつ恒常的な雇用関係が求められる理由
人材が不足しているにもかかわらず、建設業において、とくに主任技術者や監理技術者はなぜ直接的かつ恒常的な雇用関係が求められるのでしょうか。それは、建設工事の適正な施工を確保するためにほかなりません。
建設工事を適正かつスムーズに行うためには、所属する建設業者と建設現場の管理・監督を行う主任技術者や監理技術者が、お互いの持つ技術力をきちんと把握することが重要です。
出向者や派遣社員など、所属する建設業者と直接的雇用関係でない場合や雇用期間が短い場合は、お互いの関係性が希薄なことも多く、よりよい協力関係を築くことはなかなか難しいかもしれません。そこで、お互いの技術力を充分に活かすためには、直接的かつ恒常的な雇用関係が必要となるのです。
まとめ
働き方が多様化している今、所属している会社とは別の会社で働くことも珍しくありません。派遣と出向は、それぞれ特徴なども異なります。会社側もよりよい人材を確保するためにも、雇用関係を熟慮することでしょう。
建設業に限ったことではありませんが、どのような雇用形態でも、所属している会社や業務している職場で知識やスキル、経験を身に付けたり活かしたりしながら、有意義な時間を重ねることが大切かもしれません。