建設業務は派遣禁止ってホント?禁止されている理由も解説!
建設業務はその業務の特殊性から、一部の例外を除き、労働者派遣事業の適用除外業務とされています。違反した場合の罰則もあるので、注意しておきたいところです。ここでは建設業務で派遣が違法となるケース、その理由、また違反したときの罰則について紹介します。しっかり把握しておきましょう。
業界で派遣が違法となるケースがある
では早速、元となる法律を紹介します。労働者派遣法4条1項2号では、労働者派遣事業を行ってはならない対象として、建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう)となっています。この禁止対象に当てはまってしまえば、違法なことをしているつもりはなくても、違法とされる可能性があるので注意が必要です。
「自分が相手先としている契約は派遣契約ではなく、請負契約なので大丈夫」と考えている方も要注意です。指揮命令関係を生じないのが請負契約ですが、実際には発注者が請負先に指揮命令をしていることがあります。そして契約形態によらず、実態にあわせて労働者派遣、請負のいずれに該当するかが判断されることが、厚生労働省によって示されているからです。
「そんなつもりではなかった」ということにならないように状況と法律、指針などをしっかり確認しておきましょう。ただ、どこまでの助言が指揮命令とされるかの線引きが難しいこともあるでしょう。
迷ったら経済産業省の「企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度」を活用してください。これはズバリ、事業者が現行の規制の適用範囲が不明確な場合においても安心して新事業活動を行えるように、具体的な事業計画に応じて、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。
ただしいくつか注意点もあります。新事業活動を行う者が事前相談をした場合を対象としているため、事業が開始している場合は、対応してもらえない可能性が高いです。また回答の通知は原則として1か月以内ですが、延長されることがあります。便利な制度なので活用していきましょう。
業界で派遣が禁止されているのはなぜか
建設業特有の理由により派遣が禁止されています。主な理由を3つ紹介します。
重層的な下請け関係に悪影響を及ぼすから
現在建設業務では、とくに大きな案件では、重層的な下請け関係、つまり孫請けやひ孫請け等の請負関係が生じることが多いです。それぞれの請負関係の中で、雇用者に指揮命令する者や、多種多様な専門職の職人さんが働いています。
たとえば大工さん、左官屋さん、水道屋さん、電気工事屋さんなど、複雑な状態となっています。さらに、このなかに労働者派遣事業というシステムを導入すると、請負関係と派遣関係が混在するため、雇用に悪影響をおよぼしてしまう、というのが1つ目の理由です。
建設業務労働者就業機会確保事業制度が存在するから
2つ目の理由として、建設業の事業主が自己の常時雇用する建設業務労働者を、ほかの事業主に一時的に送り出す、建設業務労働者就業機会確保事業制度が設けられているからです。
この制度によって建設業務労働者は、不安定になりやすい派遣労働者になることなく、閑散期に他の事業主の仕事ができます。建設業務労働者は送出事業主とは雇用関係に、受入事業主とは指揮命令関係となります。雇用の安定を図る制度です。
建設業務有料職業紹介事業制度が設置されているから
3つ目の理由です。この制度は「事業主団体が、その構成員を求人者とし、又はその構成員若しくは構成員に常時雇用されている者を求職者とし、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における建設業務に就く職業に係る履用関係の成立をあっせんすることを有料で業として行うこと」と定義されています。このあっせん業によって、雇用の安定化と流動化の両立を図っています。
派遣を雇うとどんな罰則が科せられるのか
労働者派遣法により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されるようです(同法59条)。ほかに業務改善命令や業務停止命令を受けます(同法49条)。この命令は派遣先だけでなく、派遣元企業にも労働者派遣の停止命令がなされます。そしてこれらの命令に違反した者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されるようです(同法60条)。
建設業界は請負契約が普通で、重層的な下請け関係など業界特有の事情があり、派遣が禁止されています。その代わりに建設業務労働者就業機会確保事業制度、建設業務有料職業紹介事業制度といった特有の制度があり、労働者を保護しています。
今回紹介した、建設業界の派遣禁止理由、建設業界で派遣かどうか判断に迷ったときの対応、派遣を雇った場合の罰則などに注意して、グレーゾーン解消制度なども活用し、知らないうちに法律違反とならないように活動していきましょう。