建設業界には社会保険未加入の会社が多いってホント?
日本の会社は従業員を社会保険に加入させる責任を負います。しかし、昨今の建設業界のおいては社会保険への未加入が社会的な問題となっているのです。社会保険とは、疾病などの不測の事態に備えて国民から資金を徴収して困窮者の救済を図るシステム。この記事では、建設業界における社会保険未加入問題について説明していきます。
建設業界には社会保険未加入の会社が多い?
日本の会社で働く従業員は社会保険への加入が義務づけられていますが、建設業界の実態はその原則と乖離しています。ここでは、社会保険の定義や種類、建設業界の加入状況について解説しましょう。
社会保険未加入問題の背景
建設業界の社会保険未加入問題は、国も対策を講じるほどの大きな問題となっています。そもそも建設業界における会社の社会保険未加入の割合が高い理由は、業界の特性にあります。建設業界は元請から始まり、複数の下請け企業へと仕事を委託していくのです。
そして、末端の下請け企業まで社会保険に関する管理が行き届かず、未加入の企業が増えています。また、資金面で大手企業に劣る零細企業が、従業員への給与のうち約15%を占める社会保険料の負担を避けるために、未加入としていることも原因のひとつです。
社会保険の種類
社会保険には国民健康保険や厚生年金保険、介護保険、労働保険などがあります。労働保険はさらに2種類に分かれ、業務に係る疾病や死亡の際に適用される労災保険と、失業支援のための雇用保険があるのです。この内、法人である会社は従業員を国民健康保険、厚生年金保険、労働保険に、40歳から64歳の従業員には介護保険にも加入させる義務を負っています。
国を挙げて加入率を上げる取り組みが行われる
国は建設業界における社会保険未加入問題解決のため、数々の対策を講じることを発表しています。まず、平成29年度を目途に企業単位での加入率を100%にし、労働者単位で製造業に相当する加入率を目指すことを掲げていました。平成29年以降は、建設業でまだ社会保険に加入していない事業所に対して強制加入を進めているのです。
また、元請業者に対して、国の「社会保険の加入に関するガイドライン」に基づいて下請け企業への指導を行うことをうながしています。同ガイドラインには、社会保険未加入の業者に業務委託を行わないよう記載されているため、未加入問題の抑止力とする意図があるのです。
社会保険に未加入だと罰則がある?
法人である会社は社会保険への加入が義務付けられていることがわかりました。しかし、このルールに従わなかった場合は、状況によりさまざまな罰則が科せられることになります。
立ち入り検査、懲役、罰金が施される
社会保険への未加入が判明すると、当該事業所に対して立ち入り検査と加入指導が行われます。これに従わずにいると、6か月以下の懲役ないしは50万円以下の罰金を科せられることになるのです。また、雇用保険への未加入に関しては6か月以下の懲役ないしは30万円以下の罰金に相当します。どの処遇についても会社の信用を損なうことになるため、事業所としては避けるべき内容です。
延滞金や過去の分の保険料も請求される
社会保険未加入の事業所が加入指導を受けた際に、過去に未収であった保険料まで徴収される可能性があります。この場合、通常は従業員との折半である保険料を1度事業所が全て負担する必要があり、事業所にとっては大きな負担です。また、保険料の督促状の納付期限を過ぎると、超過した日数に応じて延滞金も請求されます。
建設業許可も受けられなくなる
さらに、2020年の法改正により、社会保険に未加入の事業所に対しては建設業許可が降りなくなりました。建設業許可は定期的に更新が必要ですが、未加入事業者は更新の際にも許可が解除されることになります。許可が降りない場合、事業運営に多大な制約となることから、各事業所は細心の注意を払わざるを得なくなるのです。
社会保険に加入する義務・条件とは
社会保険に未加入の事業所に対しては、重い処罰が科せられることになります。それでは、具体的に社会保険に加入する必要がある企業の義務や条件はどのようなものでしょうか?企業側の条件と従業員側の条件に分けて解説していきます。
企業側の条件
社会保険に加入することを義務づけられている会社のことを強制適用事業所といいます。まず、企業にも個人事業主と法人企業の2種類があります。個人事業主は、常に5人以上の従業員を雇用する場合に社会保険への加入が義務付けられるのです。また、労働保険は1人でも従業員を雇用する場合は加入が必要。法人企業については、雇用する従業員の人数に関わらず加入が義務づけられます。
従業員側の条件
従業員は、強制適用事業所に雇用される場合は、原則社会保険への加入が義務づけられます。また、パートなどの短時間雇用者についても、週に20時間以上の労働、月額賃金が8万8千円以上、501人以上の従業員を雇っている会社からの雇用、1年以上の契約見込みという条件を満たせば加入対象となるでしょう。
まとめ
本記事では、建設業における社会保険未加入問題とその背景、社会保険の概要について解説しました。従業員の健全な労働環境を長期的に保証する制度である社会保険は、相互扶助、つまり助け合いの精神に基づいて成り立っています。個人が日々の社会保険料を支払わなければ、この制度も破綻してしまうでしょう。よって、社会保険未加入の事業所に対しては相応の処罰が設けられているのです。令和になった現在も、まだ社会保険に加入していない事業所は注意しましょう。